ストーリー
地球上に唯一の集権組織、国際連邦（International Union）が成立してからすでに80年。人々は宇宙に旅立ち、色々な州国家が地球圏内にコロニーを浮かべるに至っていた。コロニー群「ニュー・ケーニヒスブルク」は、他の単独コロニーとは違い、地球から切り離してもある程度の自給自足が可能となる。そこで、ニュー・ケーニヒスブルクを新しい理想郷にしようという運動が持ち上がり始めた。その運動の中心になったのがアメリカからの移民たちであったのは、「新しい地平」を求める彼らの血から言えば当然のことだったのかもしれない。それらの指導者ジェイムズ・スチュアートは、人口や資源、軍事力などにおいて国際連邦と太刀打ちできないことを踏まえて、非戦独立主義と呼ばれる思想を打ちたてたのであった。自治を認めない国際連邦からの締めつけは苛烈なものがあったが、ジェイムズは根競べと決め込んでそれらの挑発を受け流していた。

しかし、全ての国民がその道を是としたわけではなく、NK5年正月のパレードの際に国民の一人が放った銃弾で、ジェイムズの治世は終わりを告げることになるのだった。暗殺されたジェイムズに代わって政権を取ったフランク・オブライトは、ジェイムズの腹心ではあったが同時に軍の出身でもあり、内心には平和理念への不満が渦巻いていたのだ。主席に就任するや否や、国際連邦に対し独立を宣言。国際連邦はこれを認めず、即座に軍を派遣することを決定し、ニュー・ケーニヒスブルク独立戦争の火蓋が切って落とされた。

国際連邦の兵士たちは宇宙戦の経験が浅いため、一個一個の会戦ではコロニー自治政府軍が圧勝する。しかし、国際連邦はその圧倒的な物量を武器に、着実に包囲の手を狭めてゆく。開戦から3年の時が流れても、まだ戦火が収まる気配はなかった。この膠着状態を打開すべく国際連邦が投入した新造艦が、遊撃戦艦「ヴィクトワール」であった。勝利の名を冠されたその船は、宇宙工学においては世界一のフランス州、ニュー・マルセイユで建造された船である。国際連邦の麾下にありながら、独立した作戦行動を旨とするため正規の番号を与えられなかったヴィクトワールは、「コーズ」と呼ばれる美しいクルーたちの剣、盾、そして旗として、国際連邦軍の士気を高め、コロニー軍に多大な損害をもたらすに至っていた。やがて、双方の国力が疲弊し、戦争は終わりを告げることになった。コロニー政府は、多額の賠償金と引き換えに一応の独立を認められることになった。そして、一隻の船と、そしてその乗組員である美しき虜囚たちをも手にすることになる。そして、彼女らは、クラウス・テオドール中佐が所長を務める収容所コロニー「ポート12」へと送られることになったのだった――。